高血圧の診断基準

高血圧の診断基準は日本と欧米では違いがあります。

高血圧の診断基準を決めるのは、日本では日本高血圧学会が決めています。

日本高血圧学会が発行する「高血圧治療ガイドライン」では、基準や治療方法などについて指針を出しています。
このガイドラインは4〜5年に一度改定されており、最新のものが2014年4月に出ています。

このガイドラインでは、年齢にかかわらず「収縮期血圧140以上、拡張期血圧90以上」を高血圧としており、正常血圧は以前と変わらず「収縮期血圧130未満、拡張期血圧85未満」のままです。また、至適血圧(最適な血圧)を「収縮期血圧120未満、拡張期血圧80未満」としており、昔からの「低ければ低いほうが良い」という考え方が残っています。

一方で、欧米の高血圧基準をリードしてきたのは世界保健機構(WHO)ガイドラインと、米国政府の合同委員会(JNC)ガイドラインです。

WHOから最初のガイドラインが出たのが1959年です。
60歳未満の人を対象にデータをとり、血圧が高いことで起こる心臓系の病気の場合には異常が収縮期血圧160/拡張期血圧95以上、正常は収縮期血圧140未満/拡張期血圧90未満という基準が策定されました。

その後1962年に改定され、次の改定が行われる1999年までの37年間に亘り有効なものでした。

このときの基準は、
Stage1…血圧だけが高く、ほかに何も異状のないという状態で、
・30〜40歳:140/90〜160/95は要観察
・60歳以下:収縮期160、拡張期95を上限値とする
・60歳以上を超えて血圧が上がるのは、太い血管の柔軟性低下が原因で正常な変化
・女性では、血圧が高くても重大な問題にならない
・原因の多くがストレスや不安なので、降圧剤は不要かつ無効

Stage2…心臓または血管の肥大がある状態で
・診察、放射線撮影、心電図により確定する
・降圧剤を使ってもよいが、常用してはいけない

Stage3…多くの臓器に高血圧による障害がある状態で
・心不全、冠動脈異常、肺うっ血、夜問の呼吸困難、一過性脳梗塞、眼底出血、腎障害
・降圧剤の適用ですが、強すぎる降圧は副作用を起こすので注意すべき
・虚血性心疾患、腎障害、脳血管疾患の人に対しては大きな注意が必要
・降圧剤ではなく、感染性腎症では抗生剤による原因菌治療を徹底すべき

というもので、この基準は世界や日本で長らく使われていて、最近の科学的根拠にもとづいても正しいガイドラインだったと考えられています。

ところが、1993年の米国JNCと1999年にWHOが改定したガイドラインは、製薬会社の影響を受けて基準値が大きく引き下げられました。

WHOガイドライン
正常       収縮期120〜129、拡張期80〜84
正常高値     収縮期130〜139、拡張期85〜89

当時は、製薬会社が降圧剤の売上げを伸ばす戦略として、臨床学会や医師へ利益供与して「薬を売るために病気を作る」ことをビジネスモデルとしていて、「高血圧マフィア」と呼ばれていました。

その後、世界的に薬を売るために高血圧の基準を厳しくしたことに対し、さまざまな研究結果を裏付けとした批判が巻き起こりました。
そして、改革の機運が高まり、米国では2010年医療保険改革法のなかにサンシャイン条項が盛り込まれました。
これは医師に対して製薬企業が利益供与を行った場合は報告しなければならず、違反すれば膨大な罰金が科せられることとなったのです。

欧米では2013年から、法整備の効果もあってガイドラインの改革が行われました。
2013年、米国政府合同委員会のガイドラインでは、60歳以上の基準値が収縮期血圧150とされました。
「年齢+90」が収縮期血圧の基準で、60歳以上では収縮期血圧を140未満に下げる必要性も効果もないと書かれています。

このことを受けて、日本でも2014年のガイドラインで基準が少しだけですが、緩められたという経緯があります。

⇒「血圧を3日で改善する方法」

 

サイトマップ