生活習慣病と健康診断

生活習慣病の早期発見は健康診断で

日本人の3大死亡原因はがん、脳血管疾患(脳卒中)、心疾患とされています。
そしてこれに加えて、血管性疾患の危険因子となる動脈硬化症や高血圧症、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などは、いずれも「生活習慣病」であるとされています。

「生活習慣病」は、これまでは「成人病」と呼ばれていました.

ですが、生活習慣病の発症は加齢によるものではなく、若いころからの食事や運動、喫煙、飲酒、ストレスなどの生活習慣が深く関与していることがあきらかになって来たのです。

とくに40歳をすぎてからの食べすぎ・飲みすぎ・運動不足は、たちまち“おなかほっこり”タイプの肥満につながります。

この肥満をきかっけに、「メタボリックシンドローム」(内臓脂肪症候群)を進行させることで、さまざまな生活習慣病を引き起こしやすくなるのです。

そして、最悪の場合は死をもたらすことも稀ではない脳卒中や虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)を引き起こす下地となっていきます。

こうした生活習慣病の多くは、自覚症状のないまま徐々に進行していきます。

そこで生活習慣病の早期発見・治療のために欠かせないのが“健康診断”です。

生活習慣を見直して問題点を改善すれば、中高年の生活習慣病も予防・改善することはできるのです。

もちろん、生活習慣病にも遺伝的要因も影響していることがあります。

しかし、その影響にも生活習慣の改善によってかなり対応することができるのです。

健康診断の検査数値の意味を理解する

日本は今では世界に誇る長寿国となっていますが、その一方では、食生活をはじめとする生活環境の変化と高齢化に伴い、生活習慣病は年々増加の一途をたどっています。

そして、人々の健康に対する関心が高まり、各種健康診断や人間ドックを受ける人が増えてきています。

これらの検査の結果、検査数値や検査画像などをもとに、医師より説明を受けることになります。
ですが、異常がみられた場合にあれこれと説明を受けても、一度には理解できないことも多いでしょう。

検査について正しく理解することができていなければ、医師のいうがままに、すべてを任せることになってしまいます。
その結果、自分の不調について、医師に質問することすら難しくなってしまいます。

ところが、自分が受けた各種検査結果や、そこから導き出された診断について、ある程度の理解できれば、健康の度合い(完全に健康なのか、少し危なくないか)、自分に起きている病気のおおまかな状態、治療の必要性などを判断できるようになります。

本来、健康診断は健康への不安をなくし、病気を未然に防ぐために受けるものです。
なのに、検査結果の数値をみてかえって不安が増してしまう人も多く見かけます。

検査結果で不安が増さないためにも、それを最大限に有効活用するためにも、健康診断を受ける目的と、検査数値の正しい見方・とらえ方をきちんと理解することがとても大切になってきます。

グレーゾーンの数値で病気の前兆をとらえる

健康診断の結果を見て、健康であるか、病気であるかの判断基準となるのが、臨床検査による客観的データです。

通常、検査数値が、基準値(かつては正常値)の範囲内であれば「正常=疾患なし」と、基準値の範囲外であれば「異常=疾患あり」と考えるのが客観的な判断基準として妥当であると言えます。

ところが、検査数値が正常であれば、ほんとうに健康でしょうか。
逆に、検査数値に異常があれば、ほんとうに病気なのでしょうか。

このような「正常か、異常か」という対立する考え方には、大きな落とし穴があります。

基準値よりも少し高い数値、あるいは基準値よりも少し低い数値が出た場合、境界値に属する、いわば“グレーゾーン”にあたる人は、どう判断すればよいのでしょうか。

たとえば、糖尿病の場合、グレーゾーンにあたる人は、正常型にも糖尿病型にも属さない「境界型」と診断されます。

現在は糖尿病とはいえないものの、将来は糖尿病になる可能性が考えられる、いわゆる糖尿病の予備軍という意味になるわけです。

また、検査数値が客観的データであっても、そればかりを中心に考えず、さまざまな観点からバランスよく考えるということも必要です。

つまり、検査数値にあらわれなくても、自覚症状やある種の他覚症状があれば、なんらかの疾患や不調が存在していてもおかしくないのです。

いうまでもなく基準値は非常に多数の人から得られた平均的データです。

生まれたばかりの赤ちゃんを集めた基準値、大相撲の力士集団から得られた基準値が、ふつうの成人にあてはまるとは考えにくいでしょう。

検査結果を判断するためのひとつの指標にしかすぎません。
個々の状態を勘案して判断する必要があります。

検査数値はどうして決められているの?

ここで、検査数値のいわゆる「正常範囲」というものが、どのように決められているのかをみていきましょう。

通常、基準値は、いわゆる健常者を対象に検査を行い、「平均値±2標準偏差」として決定されます。

この範囲は健常者の約95%を占めており、正常範囲と考えられます。

ところが、100%ではないだけに、健常者であってもその5%は、この範囲内に入らないことになります。
しかし、実際には、「正常=疾患なし」とされるデータの分布にも、「異常=疾患あり」とされるデータの分布にも、一定の範囲が存在します。

そして、それらは一部重なりを持ちます。
便宜上、どこかで正常と異常を分けなければいけないので、ある値を境界線として設定します。

これを「カットオフ値」と呼びます。
境界線ができれば、異常と判定される正常の群「偽陽性」と、正常と判定される異常の群「偽陰性」ができてしまいます。
つまり、基準値内たったとしても必ずしも正常とはいえず、偽陰性(ほんとうは疾患あり)ということもありうることになります。

それでは、正常と異常について検査結果と自他覚症状からできる判断をまとめてみましょう。

1.検査は異常あり、症状なし
疾患ありの可能性大。
疾患がないのに検査値が異常となる偽陽性のことがありますが、一般的には、なんらかの疾患が隠れていると考えて慎重に対処する必要があります。
たとえば、高血糖が見い出された場合です。
早期に糖尿病として食事療法(生活習慣の改善)や薬物療法により将来の発症を防ぐことができます。

2.検査は正常だが、症状はあり
再検査や精密検査をしても正常ならば、いわゆる不定愁訴や心身症として扱われることが多いです。
漢方薬・鍼灸やセルフケアなど代替医療が有効なことがあります。

3.検査は異常だし、それに合致する症状がある
その疾患に対応した治療(生活習慣の改善)が必要となります。

4.検査は正常で、症状もなし
一般的には、少なくとも受診した時点では正常と考えて問題はありません。
しかし、未来の問題発生を否定することはできませんし、場合によっては、検査結果の偽陰性や自覚症状がないこともあり、単純に問題なしとはいえません。

検査数値は、基準値だけで判断するのではなく、見落しがちなグレーゾーンにあたる境界付近の値もチェックしてください。

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