内臓脂肪型肥満の人は、高血圧になる危険が2〜3倍高い
メタボリックシンドロームのカギである内臓脂肪型肥満の場合、3つの経路が高血圧にかかわっています。
その一つは内臓脂肪からアンジオテンシノーゲンという血圧を上げるアディポサイトカインが分泌されるためです。アンジオテンシノーゲンはいくつかの変換を経て、アンジオテンシンHに変わり、これが血圧の受容体に作用して血圧をあげます。
二つめはインスリン抵抗性を強める物質が分泌され、インスリン抵抗性が強まると、腎臓でのナトリウムの再吸収が促進され、血液中のナトリウム濃度が高くなります。
これを適正に保とうとして血液中の水分が増えるために循環血液量が多くなり、血圧が上がってしまうのです。インスリン抵抗性は、末梢血管の抵抗性を高める方向にもはたらきます。
末梢血管の抵抗とは、血管が老化して血管壁の弾力性が失われ、末梢の細い血管に血液が流れ込みにくくなることをいいます。なんらかの理由で心拍出量が増えたり、末梢血管の抵抗が高まったりすると、血液が動脈壁に与える圧力が増し、高血圧になります。
また、一方で食欲抑制物質であるレプチンも脂肪肥満により高レプチン血栓となり、これが交感神経系を亢進させ、高血圧をもたらします。
内臓脂肪型肥満の人は、そうでない人に比べて、高血圧になる危険が2〜3倍高いという報告もあります。
血圧は2つの数値で表されます。心臓が収縮して血液を送り出すときの「収縮期血圧」(上の血圧)と、心臓が拡張して血液が入ってくるときの「拡張期血圧」(下の血圧)です。
140/90mmHg以上は高血圧ですが、メタボリックシンドロームの場合は130/85mmHg以上で、より厳しくなっています。
高血圧になりやすい人
高血圧は遺伝する?
高血圧は、遺伝が大きなウェイトを占めます。といっても、高血圧そのものではなく、高血圧になりやすい体質が遺伝するのです。両親がそろって高血圧の場合、その子が高血圧になる確率は約50%、片方の親だけが高血圧の場合は約30%といわれます。
高血圧には多くの因子がかかわっているので、体質を受け継いでいても、環境的な危険因子をなくせば高血圧にならずにすみます。逆に、親が高血圧でないからといって、体質を受け継いでいないとは限りません。
つまり、親が高血圧かどうかに関係なく、よい生活習慣が大切ということになります。親が高血圧の場合は、より意識して生活習慣に注意を払いましよう。
食塩のとりすぎは血圧を上げる
食塩をとりすぎると血圧が上がるのは、食塩の主成分であるナトリウムに、血圧を上げる性質があるからです。これは血液中のナトリウム濃度を一定に保つ働き(恒常性)が備っているからです。塩分を多くとりすぎるとナトリウム濃度を一定にしようとして水分の貯留が増し、これが血液量を増すことになり、血圧として上昇してしまうのです。
ただし、個人差があり、同じ量の食塩をとっても、血圧が上がる人もいれば上がらない人もいます。
喫煙、飲酒、ストレス
遺伝と食塩のとりすぎ以外には内臓脂肪型肥満、喫煙、飲酒、ストレス、性格などがあげられます。
◆内臓脂肪型肥満
高血圧とメタボリックシンドロームの関係 を見てください。
◆喫煙
たばこの成分の中にはニコチンをはじめ血管を収縮させる作用のあるものがあります。これは血圧を上げるだけでなく、さらにインスリン抵抗性も増します。したがって、血圧を上昇させることになり、血栓もつくりやすくします。
◆飲酒
過度の飲酒は心臓に負担をかけ、血圧を上げます。本来、アルコールは適量ならば血管を拡張させる方向ですが、酒のつまみになどで塩分を多くとってしまうことも血圧上昇という結果につながるのです。適量は、ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合です。
◆ストレス
ストレスがかかると交感神経の活動が活発になり、アドレナリンやノルアドレナリンなどのホルモンが分泌されます。これらは血管を収縮させ、心拍数を上げる作用があり、血圧が上がります。
真面目で几帳面、完璧主義の人はストレスを受けやすいため、高血圧になりやすいのです。地震などの災害のストレスで多くの人が血圧で倒れたのはこのためといわれています。
⇒生活習慣病の食事療法